立山・剣岳 その4 高山病か | |
二日目の夕刻の出来事 | |
剣沢小屋について早速ビールを飲む。 プハ〜〜、うめ〜〜!! 小屋前のテラスで同行の男性と世間話をした。 「この辺に来ると頭が痛くなるんですよね」と私が言った。 「酸素がいいですよ。富士山に登ったときに使ったら一発で治りました」 そうか、酸素ねぇ。それはいいかも知れない。 私は売店に行った。 「酸素ありませんか?」 「酸素はないねぇ。どうしたの?」 「ちょっと頭が痛くって…」 「酸素を吸う機械ならあるけど…」 「それってちょっと使わせて頂けます?」 「じゃ、談話室で待ってて下さい」 私は談話室に入った。 小屋のスタッフが来て「これを指に挟んで」と小さなクリップみたいなものを出した。 「これ、何ですか?」 「血中酸素量を測るものです」 血中酸素量は83だった。 「ここへ来るには室堂で一泊するといいのに…」 「室堂で一泊したんです^^;」 「水はどれくらい飲んだ?」 「約750oリットルとアクエリアス1本。それにビール2本^^;」 「夜は眠れる? 水と睡眠不足がいちばんいけない」 「昨日は寝たような眠れなかったような…」 「食欲はあるの?」 「おおいにあります」 するとスタッフは談話室にいた人に言った。 「病人がいるのでそこを空けて下さい!」 一カ所空けてくれと言ったのにくつろいでいた人全員が出て行ってしまった。 談話室は私一人になってしまった。 「そこに横になって」 スタッフは酸素マスクを取り出した。 「これを付けて」 救急車などで運ばれるときよく見る本物の酸素マスクだ。 コトコトと酸素吸入機が音を立てている。 指に計測器を付け口と鼻を被う酸素吸入器。 (なんだか大げさになってしまったなぁ) スタッフが戻ってきて「これを飲んで」 コップに入った飲み物を持ってきた。 暖かくほのかに甘い飲み物だった。 ポカリスエットのお湯割りなんだそうだ。 そこに偶然山岳ガイドのMさんが入ってきた。 私の顔を見て驚いた様子。 「どうしました?」とスタッフに私のことを聞いている。 「おたくのパーティーの方? 完全な高所障害ですね」 「明日の剣岳は無理でしょう」 (ええッ! まさか! ) 「ゆっくり安静にしていて下さい」 と言い残し二人とも出て行ってしまった。 誰も来てくれないしいつまで吸っていればいいのだ。 間もなく夕食の時間だ。 食事は食べさせてもらえるのだろうか? いつの間にか眠っていたようだ。 時間を見ると小一時間ほど経過していた。 5時になってガイドがやって来た。 やっと酸素吸入から解放された。 食事はいつものように美味しく摂れた。 ご飯のおかわりもした。 バファリンを飲んで頭痛も緩和された。 それにしても「頭痛いんだけど」の一言がこれだけ大騒ぎになるとは。 小屋のスタッフには迷惑をかけてしまった。 反省。 この日の夜は酸素のおかげでゆっくり眠ることが出来た。 夜中、雨が窓をたたいていた。 |
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剣沢小屋前のテラス | テント場には色とりどりのテントが |
あとで分かったことだが。 指に付けた血中酸素測定器は「パルスオキシメーター」というものだそうだ。 血液を流れる物質の中に酸素を運ぶヘモグロビンがある。 血液にあるヘモグロビンのうち、何%が酸素を運んでいるかを示すものなのだ。 正常な値としては96%以上、95%未満の場合は呼吸不全の疑いがあるという。 私の場合83%だったから正式な「高所障害」だったのだ。 やっぱりヤバかったのかなぁ。 |