「さわこ」さんからのメールです。
ご本人の了解を得て掲載させて頂きました。
私は 3月30・31日と 日光白根山に行ってきました。 ご報告いたします。 水戸に早朝4時集合。本日のメンバーは男性2人女性2人。 ザンザカ降りの雨も気にならない。 天気予報は回復に向かうと言っていた。私は信じる。 8時30分。日光湯元スキー場に立つ。 やはり、天気予報は当たった。 会長がリフトで、上に行くと言う。 『おお!楽チンができる・・・』 密かに喜んだ。 でも、降りてから、やっと登山口。見上げるような 急斜面が目の前にある。 アイゼンを着け、ボチボチ登りはじめる。 共同装備 (テント、コッへル、ストーブ、燃料、スコップ、ロープなど) 共同食料 (勉強のためと私が考え用意したもの) んん〜!なんか重い。もう一人の奥様とは本日初顔合わせであったが 山のベテランみたいな事言ってたにしては・・・・・ 荷物、軽い食器しか、手出さなかったぞ。 お陰で、自分で用意した食料の半分以上が我が背中にある。 会長はいつものごとく、みんなの倍くらい、もう一人の還暦迎えたロマンスおじ様も 男でござる!。。。とばかりに詰めるだけ詰めてたのに・・・・ なんか、理不尽な思いで登りだした。 後で知ったが、夏道と冬道では、ルートが違うのだ。 降雪を利用して登る冬は、傾斜がきついそうな・・・・ 『おっかな〜い』と思うほど急である。 ピッケルに頼ろうとすると、 ズブズブ 全部入る・・・ アイゼンをつけた足を一歩一歩、慎重に置いてみる。 『ヒェ〜!』 片足もぐったあ〜!! 膝までならまだ、いいぞ。 股までもぐるう〜! 背中にザック。 ピッケルはきかない。 片足もぐって、片足うえにある。 股がさけるう〜〜〜! 前につんのめったり、カメみたいに、ひっくりかえったり。 もがいて、もんどりうって、やっと這い上がる。 『わたしゃ、こんな急な斜面で、でんぐりがえってる余裕なんか無いぞ』 やれやれである。山では全て自己責任である。 きっと、うしろのお二方は 「ああは、なりたくない」 とさぞ思っていたことだろう。 私は身をもって 良い教訓を示してさしあげた。と思う。 何度も、繰り返すうち、『ああ〜!』 『きゃあ〜!』とか声もでない。 静かに オノレ と格闘して、這い出られるようになったのは、収穫だ。 途中、会長が 『振り返ってごらん』 と後をピッケルで指す。 なんとまあ〜。 男体山、太郎山、女峰山 などがクッキリ見渡せるわ。 きれい〜。と思いつつ、 あまりの急斜面であり、風も強く、おっかな過ぎて 『こんなとこで滑り落ちたらやだな。』なんてチラリと考えてしまったので せっかくの景色も今いちであった。 それでも、喘ぎつつも登りはじめて3時間で、やっと天狗平に着く。 風が強くて、ザックのピラピラが、顔にビシビシ当たって痛い。 (うちに帰ったら切ろうと思う) 赤城の山並みが見渡せる。それより風を避けられる所を捜しておにぎりにかぶりつく。 花より団子。山よりおにぎり。とにかく、へばってはいけない。まだ途中なのだから。 でも一息ついた。急斜面を登り終えた安堵で写真を撮る余裕も出てきた。 いくつかのアップダウンを繰り返し、前白根のピークに立つ。 前白根の頂上も風が強く、雪が風で飛ばされて地肌が出ている。 雨、 あがり・・・風強く・・・その為か・・・雲もガスも湧いてない。 奥白根が眼前にある。 とうとう、近づいた。 大きな立派な雄姿を見せてくれている。 頂に雪を冠し、堂々たる姿だ。私は冬の山の姿が好きだ。 山越えした甲斐有り。 『やっと会えましたね。おととしの夏以来です。今日は反対から登ってきました。』 そっと、挨拶をした。 さあ、まだ半分なんだ。眼下に見える稜線を辿り、五色沼まで降りるぞ。 そう、自らに気合いを入れ、慎重に前白根の斜面を降りた。 見下ろした時、稜線は切れてるのかな。と思ったが いざ自分がそこに立つと、広いもんだと知る。 分岐から、五色沼めざして下る。 五色沼は氷結していて、真っ白。 木々の中をもぐりながら、そして、静かに足を引き上げながら、進む。 避難小屋が見えた時のうれしさ! 足首が痛く、アイゼン、靴を脱ぎたいが為に自然と歩みが速くなる。 15時頃やっと避難小屋に着いた。 小屋の周りはまだ、雪がいっぱいで窓から出入りした。 担ぎあげた、「かになべ」 でささやかな祝杯をあげる。 当然、私は良い人なので、料理の手伝いもせず、鏡をだして髪の手入れなぞしてる 奥様にも、笑顔で なべを勧める。 山に来てはじめて、ストレスというものを感じた。 疲れていたせいか、みんな 18時過ぎには シュラフに入り寝た。 明日は奥白根。。。登頂だ。 足の痛みが気になる。でも頑張ろうと決意して寝た。 だのに、ものすごい怖い夢をみた。 おっかな過ぎ! 未だに忘れられない! なんで、火あぶりの刑なんだ。。。 (管理人注:ここでメールがプッツリ切れた) |
(管理人注:間もなく追伸が…) まちがって、途中なのに送信してしまいました。 パソコン初心者ゆえ、お許しを・・・ 続きは今晩書いて送ります。 |
(管理人注:二日後…) 今さっき飲み会から帰ってきました。 頭グラグラです・・・・・ 山口百恵を歌ってしまいました。 ヤンヤ・ヤンヤの喝采でございまいた。(チトおこがましいけど) もう、打てません。許して下され。。。。。頭。。。。。ホントグルグルです。 続きはきっと、書きますね。 |
(さらに二日後…) さわこです・・・続きです そういえば、小屋に着いた時、外でテントを設営しているお兄さん二人がいた。 急な登りの途中で、私たちをサッサカと抜かしていったお二人である。 会長が『あの二人ずい分慣れてるよ、まったく迷わずルート取ってるね』と言った。 さきゆく時に『きついッスね』と言葉をかけてくれた。 『おお!あなた方のようなエキスパート、ベテランでも、きついッスかあ〜?』 とうれしかった事を思い出す。 小屋でご一緒しないのか・・・・・ でも、その方がいいかも。。。だって避難小屋の中は。。。 ほこり臭く・・・ かび臭く・・・ アンモニア臭かった・・・ 板の間を先ず掃いた時、ねずみのフンがパラパラでてきたし・・・ 私にとって初めての、記念すべき避難小屋デビューにしては、ちょっとつらかった。 でも、無人小屋とはこんなものさ。と自分に言い聞かせた。 姉さんかむりで、掃いたり、なべ作ったり・・・・・ 『外の二人にも、かになべ作ったのでどうですか?と声をかけてきなさい』 と会長が言う。 『あの二人のトレースのお陰で我々は苦労せずしてここまでこれたのだから』 とも言う。 ご丁寧な断りがあったが、ここでも、山男の感謝の気持ちと、謙虚な気持ちに触れた思いがした。 (願わくば、私も、立派な山男になりたいぞ!と思った。女だけど。) そうして、静かな山の夜を迎え、怖い夢を見て、夜は更けていったのである・・・ 明けて午前3時。会長が起きた。ごそごそと朝食の仕度をはじめてる。 今朝は簡単にかに鍋の残りに、うどんをいれて終わりである。 時間になったら、起こして下さいとお願いしたら、 『ああ、たたき起こしてやるぞ』と言ってたのに、いつも一人で始める。 私は少しでも、会長の手伝いをしなくては・・・と起き出し、準備をする。 ベテランの奥様はご自分のザックの整理を始め、終わると、 私たちの手元を黙ってみているばかりだ。 会長もあれこれ言わない。 そうか、会長は自主性にまかせてるのね。大人だから私たち・・・と勝手に思い込む事にした。 『サイゴマデ タ々カウフモイノチ、友ノ辺ニ スツルモイノチ、共ニユク』 あなたとはムリです。と心の中でつぶやく。。。 男でござる!と頑張ったもう一人のおじ様は、奥白根登頂を断念なされた。 前日の急登でももをやられたのだ。 食事もほとんど取らず、大好きなお酒もやらず、早々に眠りに落ちていったから、 自分の判断において決断なさった。 前日、少しだけ、ももを揉んでさしあげた時、 すかさず 『いいねえ〜女性二人に揉んでもらえて』 のチャチャにも無言であったほどだ。 無理するなよ。の声に送り出されて小屋を 3時30分に出た。 ガスがすごい。 怖いばかりの夜の山と思っていたが、ヘッドランプに照らされる木々や、真っ白な雪、風の音。 全然怖くない。不思議な静寂が却って落ち着く。 自分自身と向き合えるからなのか・・・静かに時間が流れて行く・・・ 聞こえるのは、風の音と、雪を踏みしめるアイゼンの音だけだ。 雪が締まっててアイゼンの利きがいい! 『ヤッホイ〜!』ずんずん登ってやるぞ。と調子込む。 だが、ガスはますます濃くなるばかりだ。 会長は頻繁に木の枝に赤布を縛りつけている。 私はそんな会長の慎重な態度を気にするでも無く・・・・・ 『夜の山は好きだ〜。』などと一人ロマンチックに浸っていたバカものだ。 小さな動物の足跡など見つけ、喜んでいたバカものなどおかまいなしに 会長はあまりのガスに、引き返すか、続行するか、判断しながら登っていたのだ。 『引き返そう』 会長が言った。 女性二人を連れてこのまま続行するか、しないか、迷ったであろう。 ヘッドランプの明かりは足元しか見えない。 1M 先も見えないのだから、当然だ。赤布さえ見えやしない。 『ちょっと、又、急な斜面はきついな。』って思っていたんだ・・・ホントはね・・・ だから、奥白根に登れなくても全然、未練ないんだ。 昨日、立派な冬の奥白根を見られただけでも、ラッキーだったんだから。 足も痛かったし。 なんで、くだりの足の運びは速いんだろう? 気持ちもちょっと、弾むし。 4時30分 小屋着。 シュラフに入り、夜明けを待つ。 怖い夢など見ず、ぐっすりと眠れた。朝寝っていいな〜! 7時出発。 テントのお兄さん方はまだ静かだ。 『お先に・・・』 テントの方を向いて黙って頭を下げてから出発した。 んん!!! 昨日、急斜面できつかったよね? 今日はあそこを降りるう〜? 私の頭の中は ? ? ? だらけになってしもうた・・・ 『登ることは誰でも出来るが、下ることの方が難しい』 身をもって体験した・・・ ガスが濃く、稜線上にでて振り返っても、奥白根は見えない。 真っ白な世界の中を歩く・・・ 天狗平からのくだりは、筆舌に尽くしがたく、汗みどろになってくだった。 よくもまあ〜、こんな所を私てっば登ってきたのね〜 と感心するほどだ。 後の奥様も 『奥白根登らなくて良かったわね、体力もたないわ』 と言う。 だけどお返事する余裕がないっス! 『こんな所で滑落するなよ』 会長が言う。 『当たり前でございます・・・誰もそんな事望んではおりませぬ』と思いつつ、力強くうなずく! 途中、またまた、足をもぐらせたが、今度は素早く引き上げるのが上手になった。 スキー場の音楽が聞こえて来た時のうれしさ。 やっと、緊張感から解き放たれる。 リフトの横を下っているとき、私が尻もちをついて、そのまま少し滑り落ちてしまった。 はじめて、みんな笑顔になった。 白い歯を見せて笑った。 そうそう、みんなが笑ってくれて私もうれしいよ。 尻もちついた甲斐があるってもんだ。 やっと、スキー場のなだらかな場所に立った。 『下界の皆さん、楽チンしてリフト乗って、スキーで滑って、さぞ楽しいでしょう。 でも 私たちは、自分の足だけであの山、この山越えて、山の懐深く入ってきましたよ』 そんな、誇らしい気持ちで、足取りも軽く、ちょっとヨタヨタしつつもスキー場を後にした。 振り返っても、奥白根は見えない・・・・・ 当たり前か、ふた山み山越えないと会えないのだから。 『私どもを迎え入れて下さって ありがとうございました』 山の神にそう心の中でつぶやいた・・・・・ (日光白根山) 私のつたない文章にお付き合いして下さりありがとうございました。 さわこ |
2002.05.07 掲載